京都農販日誌
オータムフェス質疑応答 酸素供給剤の殺菌作用について
2019/12/17
酸素供給剤のオキシドールの話題で、ポリフェノールと二価鉄で殺菌作用が増すとのことですが、これは現場で利用できそうな技術なのでしょうか?利用できそうなら具体的な使い方をお聞きしたいです。
オータムフェスの質疑応答の回答です。
はじめにオータムフェス中の酸素供給剤の話題を整理しておきます。取扱の酸素供給剤にはいくつか種類がありますが、
基肥として利用するネオカルオキソを例にして触れておきます。
基肥用の酸素供給剤は過酸化石灰という物質が粒状になっていて、堆肥や他の肥料と合わせて使用します。
過酸化石灰が水に触れると徐々に過酸化水素と消石灰に変わります。
発生した過酸化水素は消毒液でよく見かけるオキシドールの事で、人や植物等に触れると酸素が発生し、一部の微生物に触れると滅菌作用があります。
上の写真のような降雨の後になかなか水が引かずに作物の根に無酸素のストレスを与えるような畑で酸素供給剤は有効です。
これらを踏まえた上で冒頭の質問の返答に移ります。
過酸化水素 + ポリフェノール + 鉄(二価鉄)で殺菌作用が増すという話は、フェントン反応と呼ばれる現象として有名です。
過酸化水素は巷でよく聞く活性酸素の一種で、ポリフェノール + 鉄が加わる事により、より強力なヒドロキシラジカル(・OH)という活性酸素に変わります。
今年1月に農研機構から過酸化石灰 + コーヒー粕(ポリフェノール) + 鉄塩でプランターレベルではありますが、青枯病に対して有効であるという報告がありました。
現場で利用できそうな技術であるか?ですが、過酸化石灰やコーヒー粕の使用量が現実的の範囲内であったため、おそらく利用可能な技術であると言えそうですので、今後の研究に期待しましょう。
※土1kgあたり、酸素供給剤とコーヒー粕 + 鉄塩が2gずつ
ここからは余談ですが、
実は今回話題に挙がりましたフェントン反応はキノコ菌等がリグニンを分解して腐植酸にする時に活用しています。
キノコ菌はヒドロキシラジカル等の活性酸素の強烈な作用を利用して、リグニンという非常に硬い物質を分解します。断片化したリグニンはコウジカビ等の糸状菌によって腐植酸へと形を変え、土壌中の粘土鉱物と繋がって団粒構造を作っている可能性が高いとされます。
この腐植酸はフェントン反応におけるポリフェノールと同様の働きをするので、
廃菌床といった良質な腐植質の堆肥が土に馴染むようにしつつ、酸素供給剤と良質な鉄があれば、日常的にフェントン反応が発生する事になります。
※ここでのフェントン反応では周辺に腐植酸があるので、(端折りますが)作物の根には悪影響が少ない反応になります
フェントン反応を発生させるような鉄を含んだ肥料は何があるのか?といえば、
ベントナイト系の粘土鉱物肥料に頻繁に見られる
緑色の石(緑色凝灰岩に含まれる緑泥石)が鉄分豊富とされています。
普段の土作りに酸素供給剤を仕込んでおくと、病気を解決出来るような決定打になるわけではないですが、予防的な意味合いでは確実に働いてくれます。
追記
フェントン反応は土壌中では糖と鉄が多いところで発生しやすいです。
糖分を豊富に含む黒糖肥料を意識しておくと、酸素供給剤の殺菌作用の効果が増すかもしれません。
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